26年間勤めていた大学病院を辞めて、5年ほど経験豊富な開業医の先生の所で、開業医としてのノウハウなど色々教わりました。現在開業している場所はもともと父が歯科医院を開業していた場所です。私は小学校・中学校・高校はここから学校に通っていました。しかし、周囲の様子は当時とはすっかり変わってしまいました。医院の前は、今はきれいに舗装されて歩道になっていますが、当時はドブ川が流れていました。KSP(神奈川サイエンスパーク)ができ、マンションもたくさん建ち、随分と都会的な雰囲気になりました。父が亡くなった後、この場所はしばらくは駐車場でしたが、父が亡くなって17年後、父が歯科医院をやっていた思い出のあるこの場所で平成16年(2004年)に開業しました。たまに『たしかここら辺にかなり前、歯科医院がありませんでしたか?』と尋ねられ、『それは父がやっていた歯科医院です。』と答えますと『お父様に歯を治してもらいました。』と、かなり懐かしそうに話される患者様にお会いすることがあります。父は歯科医として、とても慕われていたんだなと感じることも多いのです。
開業してつくづく感じている事、それは自分がいかに世間知らずかという事です。苦労が足りなかったことを実感しています。 大学病院に勤務していた時は、診療を行いながら主に研究、教育をしていて、それはそれで大変でした。しかし、開業してからは歯科治療の事だけを考えているだけではだめで、患者様の要望をくみ取り、ニーズに応えて行く事が大切だと思いました。以前、勤めていた歯科医院では、朝の8時から夜の10時まで診療を行っていて、夜間の診療ニーズが多い事を知りました。そこで開業当初は、仕事が忙しいサラリーマンの方にも平日に治療が受けられるように、夜9時まで診療を行っていました。しかし、開業して18年が経ち私も75歳になり大腸癌の手術を受け、肝臓に転移が見つかり抗がん剤を使用中です。そこで体力的に無理の無い時間で働く事にしました。当院は当初より高齢の方やハンディの有る方でも利用しやすいように『バリアフリー』で診療室まで入ることができるようにしてあります。開業医は歯科医であると同時に、人事管理者であり、経営者です。多面的な業務をこなして行かないといけないので色々と大変ですが、やりがいを感じる事が出来る職業だと思っています。